2013年4月8日月曜日



施設で働く上で大切なのは、「子どもの困難に共感できる心」

‐ 普段、先生は具体的にどのようなお仕事をされていらっしゃるのか、教えていただけますか。

山口先生: 
一つは、
ケアワーカーさん(※施設で働く職員の方)の子どもへの関わり方のスーパーバイズです。
子どもについてケアワーカーさんが書く日誌に目を通して、
きちんと子どもの立場に立てているか、子どもは傷ついていないか、という視点でチェックし、
ケアワーカーさんが気付かなかった視点をアドバイスしたりしています。

もう一つは、施設の運営業務です。
学校の校長先生、法人の関係者、児童相談所との連絡など対外的な関係調整をしています。
また、施設の運営についての会議などもあります。



‐ 筑波愛児園では、1人の子どもをケアワーカーの先生1人が担当する体制になっているのですか。

山口先生:
いいえ、愛児園では、子どもごとの担当制ではなく、ホームごとの担当制をとっています。
青空ホームに5人、太陽ホームも5名、さくらホームに4名、つくしホームに3名、みつばホームにも3名、
スタッフがいて、そのホームを担当しています
(※現在の筑波愛児園は、建物が複数に分かれて運営されている)。
さらに、子どもごとに自立支援計画を立てる担当者を決めています。


‐ 先生がスーパーバイズされるとき、大事にしていらっしゃることはどのようなことですか。

山口先生: 
この仕事で一番大切なことは、「子どもの気持ちに共感すること」です。
「子どもの大変さを自分のこととして受け止められる」ということが、この仕事の原点だと思っています。
そしてその上で、子どもの大変さをいくらかでも和らげること、それが私たちの仕事だと思います。

施設で暮らす子どもたちは、一見すると通常の生活を営んでいるため、
学校の集団、幼稚園の集団、スポーツクラブの集団といった、
その他のよくある子どもの集団と同じように見えてしまうんですね。
ですが、小学校にしてもスポーツクラブにしても、
集まって来る子どもたちには、入りたいという自分の意志が前提にあります。
そして、周りにいる親や友人も、それを良いこととして肯定的に見ています。
小学校に入るときに「友達100人できるかな」なんていう言葉もありますが、
それくらい楽しいこと、良いことなんです。

ところが施設にいるのは、
そんなところに入りたくないのに、知らない人と知らない場所で生活をすることを、
大人の力で強制されてしまった子どもたちです。
その状況は、子ども達にはなかなか受け入れられません。

自分の責任ではないことを押し付けられ、それを受け入れることは大変なことです。
例えば、よく実習生に聞くのですが、「私の車のローンを代わりに払えと言われたらどうするか」。
すると皆、「いやです」と答えます。
それでも払わなければならないのだと強制されて、お金まで取られたらどうなるでしょう。
最後には怒りの気持ちが沸いて来ますよね。
自分の意図しなかったことを強制されるというのは、怒りが伴うことなんです。
児童養護施設で働くには、子どもたちのそうした部分に対する共感がないと、
ダメなんだろうと思います。

‐ 施設で働かれている先生方は、皆さん、最初からそのような共感をお持ちなのですか。

山口先生: 
そうではないですね。
実習生には、理解の仕方には、「二人称」と「三人称」があるという話をよくします。
「どこかの誰かが虐待をされた」という三人称の理解で自分の心は痛みません。
二人称の理解というのは心を痛めることなんです。
児童養護施設で働くには、二人称の感覚を持たなければ子どもに近づいていけません。

「教育」と「養育」の差


‐ 先生はよく、施設で行っているのは「教育」ではなく「養育」だとおっしゃいます。
  その違いについて、お考えを聞かせていただけますか。

山口先生: 
「養育」とは、その子どもが「そこに存在するだけで価値がある」ということです。
「教育」は基本的には、その子どもが「できるから価値がある」ということ。
例えば、できなければ学校は退学になりますし、
個別的であることよりもみんな一緒であることが重視されます。
また、知識ある先生が知識のない子どもたちに教えるという、一方的な関係が基本にあります。

「養育」には、
子どもの中に、この人に育ててほしいという愛着関係がないといけないんですね。
お母さんがいつも正しいことを言うから子どもはそれを受け入れるのではなく、
お母さんが大好きだからお母さんの言うことは大切なことだと子どもに伝わる、
それが養育だと考えています。
子どもたちとそのような関係性を築くことが大事です。

‐ 一般的な子育てにも通じる考え方だと感じます。

山口先生: 
はい、基本的にはそうだと思っています。



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●児童養護施設の支援をするための寄付はこちら。
http://www.living-in-peace.org/chancemaker/

“子どもの貧困”の現状と今後を考える「Chance Maker Hour」のご案内

私たちLiving in Peaceは、機会の平等を通じて、貧困の削減を目指す事業を運営する認定NPOです。この度、これまでに私たちが知りえた問題の現状と問題解決の仕組み、そしてその今後についてお話する機会「Chance Maker(チャンスメーカー) アワー」を企画しました。

Chance Maker(チャンスメーカー) アワー」では、いわゆる“子どもの貧困”の実態を踏まえたうえで、児童養護施設の現状や、私たちLIP教育プロジェクトが運営している事業内容、パートタイムNPO(他に本業を持つメンバーで運営されるNPO)の具体的な活動、所属メンバーがLIPに入ったきっかけ等についてお話させていただきます。

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“子どもの貧困”に関心のある方
児童養護施設の現状に興味のある方
パートタイムNPOの活動に興味のある方
Living in Peaceの活動への参加に興味のある方
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<開催概要>
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 ※会場の都合上、受付開始時間後にお越しください。
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