2013年2月22日金曜日

(編集担当より)

みなさま、第一回目の書評リレーの最後は、ロンドンで暮らす関口から届きました。ロンドンはきっと東京よりもずっと寒いのでしょう。その中で書かれたこの芯の強い書評ときたら・・・と、ひとり感慨にふけりつつ当地の天気情報を見てみると、・・・今年の東京は良い勝負です。いさぎよく負けて欲しいものですね。。
さて、今回の書評でとりわけ印象的だったのは、取り上げられた本のタイトルです。力強く、鋭く、そして優しさのあるこの言葉のひびきが、日本の書店でも、多くのひとに届くといいなと、つい思わずにいられませんでした。


何かの問題に取り組もうと持った時、まずはその問題を様々な視点から理解することがとても大事だと思います。

私たちがパートタイムNPOという形で、児童養護施設で生活する子どもたちをサポートしたいと思った時、私たちの視点は比較的第三者的なものであることが多いはずです。

それは、問題を客観的な視点から見るという意味では良いのですが、そこに圧倒的に欠けているのは、当事者である子どもたちや現場で子どもたちを支える職員の方々の視点です。

というわけで、私がはじめて教育プロジェク'トの活動に関心を持った友人に、まずはこれをとご紹介したいのは、そんな問題の当事者たちの視点に少しでも近づくことを助けてくれる本です。

児童虐待をされた経験を超えて


Christiane Sanderson, The Warrior Within: A One in Four Handbook to Aid Recovery from Sexual Violence, One in Four, 2010

この本は、虐待の被害者が過去の経験を乗り越えるための助けとなるように書かれたハンドブックです。'The Warrior Within'というタイトルには、過酷な経験を生き抜いたあなたの中には、ものすごい強さが隠されている。その強さがこれまであなたを守ってきたし、これからの回復をも支えていってくれる・・・。そんな意味が込められています。

ちなみに、この本の著者は、ドイツの児童養護施設で育ち、イギリス人の家庭に養子として引き取られ、現在はカウンセラーとして特に性的虐待の被害者を対象にしたセラピーを行っています。

虐待という経験には、それを実際にくぐり抜けた人にしかわからないことがたくさんあると思います。それでも、少しでもそれはどういうものなのか、辛い過去を乗り越えて自分の人生を取り戻す道筋とは一体どんなものなのか、そんなことを教えてくれる本です。

児童虐待をしてしまった人を“許す”ということ


たとえば、許すということ。

自分に危害を加えた人や、その状況を知りながら助けてくれなかった周りの人のことを許すのか、許さないのか。今後自分がよりよい人生を生きていくために、その人たちとの関係をどうすることが一番よいのか。

著者は、自らの心を癒すために、相手を許すことが必ずしも必要なわけではない。自分にとって本当に必要だと思う選択肢を取ればいいが、虐待を止められなかった自分自身のことを許すこと忘れてはならない、と説きます。

著者のChristiane Sanderson。
彼女自身のHPでのこの本の紹介は、こちら

その他にも、
  • 街中にいても突然起こりうるフラッシュバックにどう対処するのか。そのための手段にはどんなものがあるのか。
  • 人間関係の築き方をどう学ぶのか。周りの人たちが当たり前に行っているコミュニケーションが、自分にとってはとてつもなく難しいとき、それをどうやって身につけるのか。
  • 突然襲ってくる不安感にどう向き合うのか。それをかき消すために、ついつい何かの行動を取らないと気が済まない。どうしたらいいのか。
等々、過去の経験を決してなかったことにはできないけれど、それを乗り越えて、自分の人生に対するコントロールを取り戻すことはできる。著者は、そんなたしかな希望を持たせてくれます。

自分の身近な人が虐待を経験していた場合に、どのようなことを知っておくべきかといった情報も含まれた、タイトル通りの「ハンドブック」です。

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